かたしま〜ず・にゅ〜す

もう春分、光陰矢の如しです。前回の記事を見返すと、立春から早一月云々とあり、毎回同じようなこと書いています。その前回から早一年経ってしまい、journalからannualに改名すべきかもしれません。光陰で思い出したけど、中国語の「時光」という言葉がとても好きで、ホウ・シャオシェンの『珈琲時光』(一青窈と浅野忠信のやつ)で知ったか、大学の台湾人の先輩に聞いたのだったか、勝手な解釈だけど、単なる時間ではなく、時代とか、場所の雰囲気とか、暮らしとか、時間にまとわりついている何かを含んでいるイメージなのが良いと思っています。

話変わって、僕の生まれ故郷は、高知県宿毛市片島というところで、小学までそこで過ごし、中学からいの町、大学から退職するまで20年ほど東京にいて、途中愛媛にも2年いたけど、数年前高知に戻ってきました。

高知に戻る前、でも地元には度々帰っていた頃、母に、片島で地域活動をしている「かたしま〜ず」* の事務局を務める山下博美さんに引き合わされた。彼女は大学の先生でもある。

* かたしま〜ず website / instagram / facebook

南海トラフ地震が起こると、片島(確か元々無人島で、明治の偉い人が埋め立てて宿毛市街から一続きにした土地)は1~2m地盤沈下を起こす想定らしく、防潮堤を人間の背丈より少し高くしなければいけなくて、海が見えなくなった時に、どうすれば暮らしと海の関係を、より親密な状態で残せるかみたいなことで、一・元・地元民の、住環境を考る職業の人間として、意見を求められたのが最初だったでしょうか。特に助けになれたわけではないのですが。

彼ら(博美さん以外のメンバーにはまだお会いできていないけど、同じ小学校出身の方々)は「かたしま〜ず・にゅ〜す」という交流新聞を、2017年から月一くらいの頻度で作り、地域の小中学校や店舗、全住戸に配布しています。どんな内容かというと、外向けに誇るような大文字の名物などではなく、片島の人々の暮らしに根付いている事柄(言葉・料理・店・音楽・自然環境・生活必需品その他諸々)、それも普段意識にのぼっていなそうな名物がたくさん取り上げられていて、よくこんなにネタがあるなと感心させられるが、生活を密かに形作るそれらを、住民自らが実感を伴って再認識し、自分たちの生きる場所を丁寧に見つめなおすきっかけを作っている。

これを外の人間が読んで面白いかわからないし、その必要も全くないのだけど、内の人が感じるのとは違う種類のおかしみや、それにとどまらない何か普遍的なものが、あるように思います。先日高知市の「十月」というギャラリーで見た、知らない家族の家族写真群の展示に感じたものとも少し近いかもしれません。

この交流新聞、僕も1号だけレイアウトを手伝ったことがあって、この春にこれまでの全号をまとめた冊子を作るとのことで、今回表紙のデザインをお手伝いしました。片島のことに微力でも関わることができて、とても光栄です。機会があれば是非手にとってみてください。

Mar.20, 2024